BitSummit the 13th Summer of Yokai 1Fステージ「M.S.S Projectのクリエイターズトーク」についてレポート形式でお届けいたします。出演者 FB777、eoheoh、森山 尋(株式会社PICTORY代表取締役社長)森山 尋(もりやま ひろし)株式会社 PICTOY代表取締役/プロデューサー、ディレクター『ちびロボシリーズ』『城とドラゴン』『ドラゴンポーカー』など数々のヒット作を手がけたゲームクリエイター。2020年に独立し、現在は株式会社PICTOY代表として、独自の発想と実行力でゲーム業界に新たな風を吹き込んでいる。ーー今回は城とドラゴンやドラゴンポーカーを手掛けた株式会社PICTORY代表取締役社長でプロデューサーの森山 尋さんにお越しいただきました。森山尋さん:知らないおじさんが出てきてすみません、ゲーム作りおじさんの森山です。よろしくお願いいたします。ーー事前の質問案に「ぼくらの配信をみたことありますか?」というちょっとおこがましい内容を盛り込んだのですが(笑)普段ゲーム配信は見られたりするのでしょうか?森山尋さん:僕、普段ゲームは全然やらないんですよ。ただ、配信者の方ってユーザーに近いじゃないですか。そういった方がどのように反応して配信するのかを考えながら作ったりはしています。◯ゲーム業界に入るまでーー子どもの頃に好きだったゲームってなんだったんですか?森山尋さん:家に当時としては珍しいPCがあって。父親のだったんですけど、それでポピュラスなどの海外のゲームを嗜んでました。あと、もろにファミコン世代なのでスーパーマリオはやっていました。当時はゲームショップに行くと子どもたちがファミコンをプレイしていてゲームセンターみたいでしたね。ーーそうやってゲームに触れてゲームクリエイターをめざしたいと思ったわけですか?森山尋さん:いやないですね。ないですけど、アドベンチャーブックを作るのが好きで。当時流行っていたんです。自作で作って友だちに遊んでもらったりはしていましたね。ホント、単純に遊びでやっていただけなんですけど。ーーゲーム業界に入る前はなにをしていらっしゃったんですか?森山尋さん:予備校に通うフリをして毎日パチンコに行ってました(笑)。当時はバブルだったこともあって今より稼いでいたと思います。ーーすごいですね! そのときの経験がゲーム開発に影響を与えたりとかしましたか?森山尋さん:あとあとですけど、ギャンブルで感じる高揚感ってゲームで遊んでいるときのユーザーの感情に近いので、ゲームづくりに役立っているんじゃないかなぁ……って、こういう場では言うようにしています(笑)。ーーパチンコ生活からゲーム業界に入ったきっかけはなんだったんでしょうか?森山尋さん:バブルが崩壊して、パチンコも出玉が少なくなって食っていけなくなったんです。それでパチンコでめちゃくちゃ負けてバイクで帰っているときに、ホント偶然にゲームの専門学校を見つけて、ゲーム業界面白そうだなと。ーー勢いに任せて?森山尋さん:何も考えないで生きていたんです(笑)。◯ゲーム業界に入ってからーーそれで専門学校を卒業してすぐにゲーム業界に入れるのはすごいですね。森山尋さん:当時は今と違って大手以外にも中小規模のゲーム会社がたくさんある時代で、好きな人が入れるような緩い業界だったんです。直接気になったゲーム会社を訪ねて、じゃあ今からテスト作るから待っててね、みたいなノリ。それで何社か出入りしてノウハウを学んでいきました。5社目が結構大きな会社だったんですけど、入って3ヵ月くらいしたら午前中にいきなり社長が「全員地下に集まってくれ」っていうんです。「昨日まで頑張ってきましたが、午後に債権者が赤紙を貼りにくるので、それまでに私物を持って帰るように」と。まじか! ってなりましたよね。ーー今では考えられない衝撃的な出来事ですね。森山尋さん:でも当時はゲーム会社が倒産することは普通で、先輩たちも手慣れた感じで赤帽を手配していたりしてました。昔はそういう時代でした。ーーゲームづくりで影響を受けたゲームはなんでしょうか森山尋さん:スーパーマリオブラザーズですね。僕ら世代の人たちには衝撃的なゲームでした。世界で一番売れているゲーム。土管から出てきてカメは踏んで倒すなんていう、冷静に考えるとすごい世界観なのに、ゲームとして楽しいからなんの違和感もなく受け入れて、今思ってもやっぱりすごいなと思います。ーーその後森山さんもヒットゲームを生み出すわけなんですけど、その会社から独立した経緯はなんだったんですか?森山尋さん:城とドラゴン、ドラゴンポーカーといったゲームの企画、原案、開発も統括するような立場をやらせてもらって、最初20人くらいの会社がそれらのヒットで大きくなったんですけど、それでも変わらず全部手掛けていたら、左半身が動かなくなったり、倒れたりしてしまって。過労ですよね。それをきっかけに老害になる前にやめようかなと思って、独立しました。ーーゲームづくりは大変ですね。森山尋さん:作ることはもちろん大変ですけど、ソーシャルゲームという性質上リリース後も運営をしないといけないので24時間稼働なんですね。夜中でも問題が起これば責任者として集まらないといけないですし。そういうのを10年ぐらいやっていました。楽しかったんですけどね。それがゆえにぶっ壊れちゃいました(笑)。ーーゲームづくりで一番楽しいことはなんでしょうか?い森山尋さん:ろいろあるんですけど、やっぱりリリースする瞬間ですね。あるあるなんですけど、社内で不評だったものがウケたり、その逆でうんともすんともなこともある。ほんとリリースしてみるまでわからなくて、それこそギャンブラーの血が騒ぐんですよね。◯ゲームレポート森山尋さん:今回は、昨年まで運営していた「モンスタークリエイト」で遊んでいただけたらと思います。このゲームはオリジナルキャラクターを作って戦わせるゲーム。戦わせるまでは時間がかかるので、キャラを作って散歩させるところぐらいまでしてもらいましょうか。ーーいろんなキャラクターが歩いていますね。森山尋さん:他の方が作ったキャラクターをSNSみたいな形で共有していいねを押したりすることもできます。ではまずクリエイトボタンを押してキャラクターを作成してみてください。本来はキャラクター制作用のパーツを集めていくんですが、今回はすべてのアイテムをオープンした状態のものをもってきたので、気になるものを直感的に選んでみてください。ーー顔や足、目、小物パーツといろいろあっておもしろいですね。森山尋さん:各パーツを選択して位置調整だけでなくサイズや色の変更も可能です。足などはうごきにもバリエーションがあります。ーーこれ、ちょっとこだわりたくなっちゃいますね。森山尋さん:指先でいかに手作り感を感じてもらえるかというUIを一生懸命考えて、たとえばNintendo DSのようにペンがあるとそれで細かいこととかできるじゃないですか。でも指ではどこを押しているか細かく分かりづらいぶん、パーツをパレット代わりに調整するようにして直感的に作れる感触にこだわりました。ーーこのゲームはサービスが終わってしまっていますけど、だからこそ次のゲームに期待したいですね。最後に、ゲームづくりに興味のある方にアドバイス、極意をいただきたいと思います。森山尋さん:ちょっと上から目線になって申し訳ないですが「面白いものはトイレに出てくる」。これ真面目です。理由は、トイレってひとりですし、めちゃめちゃ油断しているじゃないですか。アイデアってどんなに追いかけても捕まらないみたいに出てこないんですけど、なぜかこういうふと油断したときに出てくるんです。ぜひアイデアに悩んでいる方がいたらトイレで思い出していただきたいです。